私の母は80歳近く、世間一般的には高齢者と呼ばれる年齢です。
すごくパワフルで明るい人で、ちょっと見は実年齢よりも随分若く見えると思います。
そして本人も健康でいることに気を使っていて、現在は持病などもなく元気に過ごしています。
そんな母ですが、いくら見た目が若くて元気でも、いつ何時、何が起こるかわからない年齢なのだと、私自身も少しずつ意識するようになりました。
もしもの時になってから「どうしよう」と慌てるのではなく、元気な今だからこそできることがあるのではないか。
そう考え、まずは家族のお金について調べてみることにしました。
まず気になったのが、銀行口座の『凍結です』。
家族が認知症になったら、お金はどうなる?
「認知症になると銀行口座が凍結される」と聞いたことがありました。
でも、調べてみると、認知症になったら自動的に口座が凍結される、というわけではないようです。
銀行では、預金の引き出しなどの取引を行う際、原則として預金者本人の意思確認が必要です。
そのため、認知症などによって本人の判断能力が低下し、金融機関が本人の意思を確認することが難しいと判断した場合には、本人による預金の引き出しなどが制限されることがあります。
つまり、
「認知症になった瞬間に口座が凍結される」
というより、
「本人の意思確認が難しくなると、これまでのように本人が自由にお金を動かすことが難しくなる可能性がある」
と考えたほうがよさそうです。
どうやって「判断能力が低下した」と判断されるの?
では、銀行はどのような場合に本人の判断能力が低下していると判断するのでしょうか。
実際の判断や対応は金融機関によって異なりますが、窓口での本人とのやり取りや、家族などからの相談をきっかけに、金融機関が本人の意思確認が難しいと判断することもあります。
そもそも「口座凍結」って?
銀行口座の凍結とは、特定の事情によって、預金の引き出しや振り込みなどの取引が制限される状態のことです。
口座凍結と聞くと「お金がなくなるの?」と思ってしまいそうですが、口座に入っている預金が消えるわけではありません。
凍結される理由によって、できなくなる取引や解除のための手続きも異なります。
口座が凍結される主なケースには、次のようなものがあります。
①名義人が亡くなったことを金融機関が知った場合
② 本人の意思確認が難しくなった場合
③ 不正利用や犯罪などの疑いがある場合
④ 本人確認や口座情報に問題がある場合
⑤ 裁判所などから差し押さえの命令を受けた場合
※口座凍結にはいくつかの原因がありますが、この記事では高齢の親が認知症などになった場合について考えていきます。
もし口座が凍結されてしまったら
口座が凍結されたからといって、預金がなくなるわけではありません。
ただし、家族が自由に引き出せるわけでもありません。
では、すでに口座が凍結されてしまったら、どうすればよいのでしょうか。
まずは、その口座を利用している金融機関に相談することが大切です。
本人の生活費や医療費、介護費、施設の利用料など、本人のために必要なお金について事情を説明することで、金融機関によっては、一定の手続きによる払戻しに対応してもらえる場合があります。
ただし、対応方法や必要な書類などは金融機関によって異なります。
また、本人の意思確認が難しい状態が続き、家族が継続的に財産を管理する必要がある場合には、成年後見制度などの利用を検討することもあります。
口座が使えなくなると、何が困る?
もし、認知症などによって本人の意思確認が難しくなり、銀行口座の取引が制限されると、具体的にはどのようなことに困るのでしょうか。
私が特に気になったのは、次の4つです。
- 生活費を本人の口座から出しにくくなる
これまで本人の口座から引き出していた生活費も、本人の意思確認が難しくなると、家族が自由に引き出せなくなる可能性があります。
毎月の生活費だけでなく、家賃や光熱費、通信費など、本人の口座から支払っているものが多ければ多いほど、影響は大きくなります。
「本人のお金なのだから、家族なら使えるのでは?」と思ってしまいますが、家族だからといって自由に預金を引き出せるとは限りません。 - 医療費・介護費・施設費などの支払いに困る
認知症になると、医療費や介護サービスの利用料、場合によっては施設の入居費など、これまで以上にお金が必要になることもあります。
ところが、その支払いに使っていた本人の口座が使えなくなると、必要な費用をどのように支払うのかという問題が出てきます。
特に、まとまった費用が必要になったときには、「本人の預金はあるのに、家族が簡単には動かせない」という状況になる可能性があります。 - 家族が「お金の管理」をする負担が増える
本人に代わって家族が生活費や医療費などを管理することになれば、支払いだけでなく、口座や契約の確認、領収書の整理など、さまざまな作業が増えていきます。
ただでさえ、介護や病院への付き添いなどで家族の負担が増える時期。
そこに「お金をどう管理するか」という問題まで加わると、家族にとって大きな負担になるのではないでしょうか。 - 「どうすれば本人のお金を使えるのか」を調べて手続きする負担
そして、私が意外と大変そうだと感じたのが、ここです。
「口座が使えなくなったら、どうすればいいの?」
調べてみると、本人の生活費や医療費などの支払いが必要な場合には、銀行に相談することで対応できるケースもあります。
ただし、必要な書類や手続きは金融機関によって異なるため、いざというときに一から調べるのは大変です。
認知症になってから慌てて対応するのではなく、元気なうちに「お金はどう管理しよう?」「どう過ごしたいのか」を本人の意思を聞きながら、家族で話しておきたいなと、強く思いました。
元気なうちに、家族のお金について考えておきたい
認知症などで本人がお金の管理をすることが難しくなった場合だけでなく、万が一亡くなった場合にも、家族がお金の管理のことで困ることがあります。
だからこそ、何か起きてから慌てて調べるのではなく、元気なうちに家族のお金について考えておく必要があると、私は思います。
元気なうちに確認しておきたいこと
今回、認知症になった場合のお金の管理について調べてみて、「そもそも家族が、本人のお金のことをどこまで把握しているんだろう?」と考えました。
認知症になる・ならないにかかわらず、病気や入院など、突然家族がお金の管理を手伝うことになる可能性はあります。
そのため、高齢の家族がいる場合は、本人の意思を尊重しながら、元気なうちに次のようなことを家族で確認しておくと安心なのではないかと思います。
- どこの銀行を利用しているか
- 普通預金・定期預金など、どのような預金があるか
- どこの証券会社を利用しているか
- NISAや投資信託などの金融資産があるか
- 年金の受取口座はどこか
- 公共料金や家賃など、口座から引き落としているものは何か
- どのような保険に加入しているか
- 不動産を所有しているか
- 住宅ローンなどの借入があるか
すべての金額や細かい内容まで共有する必要があるとは思いません。
ただ、「どこに、どんなお金や契約があるのか」を把握しておくだけでも、いざというときに調べる負担を減らせるのではないでしょうか。
もちろん、どこまで家族に伝えるかは、それぞれの家庭によって違います。
本人の気持ちやプライバシーも大切にしながら、「何かあったときに、家族が何も分からない」という状態にならないよう、元気なうちに少しずつ話しておくことが大切なのかなと思います。
認知症に備えて、今からできること
家族で話し合い、共有する以外にもできることがあります。
認知症や障害などで判断能力が低下した場合に備え、さまざまな制度やサービスがあるのをご存じですか?
本人が元気で判断能力があるうちに準備しておくことで、将来の財産管理や生活上の手続きをサポートできるものがあります。
一方で、制度によって利用できる時期や、できることはそれぞれ異なります。
調べてみると、認知症などに備えるための制度やサービスには、いくつかの選択肢がありました。
似ているように見えるものもあったため、まずはそれぞれの違いを簡単に整理してみます。
| 制度・サービス | 主な窓口・利用先 | いつから? | 家族は何ができる? | 費用 | 我が家の重要度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 任意後見制度 | 公証役場・家庭裁判所 | 元気なうちに契約 → 判断能力が低下した後に開始 | あらかじめ決めた範囲で、財産管理や生活・療養に関する手続きを任せる | かかる | ◎ |
| 任意代理人 | 本人と代理人との契約 | 原則、元気なうちから | 本人に代わって、契約で決めた手続きなどを行ってもらう | 契約内容による | ○ |
| 銀行独自の代理人制度 | 利用している銀行 | 銀行・制度による | 預金の引き出しなど、銀行との取引を代理してもらう | 銀行による | ◎ |
| 財産管理サービス | 銀行・金融機関など | サービスによる | 預金や資産などの管理をサポートしてもらう | サービスによる | ○ |
| 家族信託 | 家族間の契約・専門家など | 元気なうちに契約 | 財産を家族に託し、決めた目的に沿って管理・活用してもらう | かかる | △ |
| 法定後見制度 | 家庭裁判所 | 判断能力が低下した後 | 家庭裁判所が選んだ成年後見人等が、財産管理や必要な手続きを支援 | かかる | △ |
| 日常生活自立支援事業 | 社会福祉協議会 | 判断能力が不十分になった後 | 福祉サービスの利用手続きや、日常的なお金の管理などを支援 | 利用料あり※ | △ |
※費用や利用条件は、制度・金融機関・契約内容などによって異なります。
※「我が家の重要度」は、我が家が優先して検討したいと考えている度合いを◎・○・△で表したもので、制度そのものの優劣や、すべての家庭に当てはまる順位ではありません。
次に、それぞれどのような制度なのかを、簡単に見ていきます。
認知症になる前にできること
| 任意後見 | 任意代理 | |
|---|---|---|
| 契約・準備 | 元気なうち | 元気なうち |
| 実際に任せる時期 | 判断能力が低下した後 | 元気なうちから |
| 本人の判断能力 | 低下している | ある |
| 家庭裁判所 | 任意後見監督人の選任で関与する | 原則として関与しない |
| 主な目的 | 判断能力が低下した後の財産管理などに備える | 元気なうちから財産管理などを任せる |
例えば任意代理なら、
「銀行の手続きなどを、自分の代わりに家族にお願いしたい」という場合に、あらかじめ代理人を決めて、どこまでのことを任せるのかを契約で定めます。
一方、任意後見は、
「今は自分で管理できるけれど、将来できなくなったときに備えておきたい」という場合に利用します。
どちらも元気なうちに準備するけれど、任意後見は将来に備える、任意代理は今からお願いする。
この違いを知っておくと、選択するときに考えやすくなります。
任意後見、任意代理、銀行独自の代理人制度を比較してみました⬇️
| 任意後見 | 任意代理 | 銀行独自の代理人制度 | |
|---|---|---|---|
| 契約・準備 | 元気なうち | 元気なうち | 元気なうち※ |
| 実際に任せる時期 | 判断能力が低下した後 | 元気なうちから | 銀行によって異なる |
| 本人の判断能力 | 低下した後に利用 | ある状態で利用 | 銀行によって異なる |
| 家庭裁判所 | 任意後見監督人の選任で関与 | 原則として関与しない | 原則として関与しない |
| 主な目的 | 判断能力が低下した後の財産管理などに備える | 元気なうちから財産管理などを任せる | その銀行での取引を代理人に任せる |
※銀行独自の代理人制度は、本人が元気なうちに代理人を指定するタイプがある一方、制度の内容や利用条件は銀行によって異なります。
利用している銀行にどのような制度があるのか、元気なうちに確認しておきましょう。
我が家でも、母が元気なうちに、利用している銀行の制度や手続きについて確認しておきたいと思っています。
判断能力が不十分になった場合に検討できる選択肢
任意後見と法定後見を比較してみました⬇️
| 任意後見制度 | 法定後見制度 | |
|---|---|---|
| 契約・準備 | 判断能力があるうちに、本人が任意後見人を決めて契約 | 判断能力が低下した後に、家庭裁判所へ申立て |
| 実際に任せる時期 | 判断能力が低下した後 | 判断能力が低下した後 |
| 本人の判断能力 | 契約内容を理解して契約できることが必要 | 判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助を利用 |
| 家庭裁判所 | 任意後見監督人を選任 | 成年後見人等を選任 |
| 主な目的 | 将来の財産管理や身上保護をあらかじめ決めておく | 判断能力が低下した本人の財産管理や身上保護を支援 |
まとめ
今回は、「家族のもしもの時、どうしよう……」と慌てるのではなく、元気な今だからこそできることがあるのではないか?と思い、銀行の口座凍結についてや、さまざまな制度・サービスについてまとめました。
私自身、父を病気で亡くした経験があります。
一度病気になってしまうと、「家族のもしもの時」の話をするのは、はなかなか難しいものです。
お金のことや、これからのことについて話しておいたほうがいいと、父を含めた家族全員がわかっていたと思います。
それでも、話すタイミングや雰囲気には、みんなが気を使っていました。
そんな経験もあり、母ももうすぐ80歳を迎えるにあたって、「みんなが集まった時に少し話したい」と、先日電話で話してくれました。
私も、家族として今のうちに把握しておかなければならないことや、備えられることはないかと、いろいろ考えるようになりました。
ですが、これはあくまでも我が家の話です。
「家族だから知っておきたい」という気持ちもあれば、「家族だけど知られたくない、話したくない」、または「家族だけど聞きたくない」ということもあると思います。
とてもデリケートな問題だと思います。
私の気持ちや母の気持ちだけでなく、ほかの家族の考えや思いもあります。
一番大切なのは、母本人の意見や意志を尊重することだと思います。
その一方で、「もしもの時」には、家族の支えや判断、協力が必要になることもあります。
だからこそ、誰かに無理に話してもらうのではなく、それぞれの思いを大切にしながら、元気な今だからこそ、少しずつ話し合っておけたらと思いました。
この記事が、家族のお金やこれからのことを考えるきっかけになればうれしいです。
次回は、今回と同じように「家族のもしもの時」について、証券口座や新NISAはどうなるの?など、投資に関するお金についてまとめたいと思います。


コメント